主人公不在の竜の国 8



「まず、何をするんだ?」
興味津々で、べにあかがそう聞くと、カイキは事なげに笑って
「皆に挨拶を」
と、言葉少なに言う
子竜たちにとって、この森はどちらかと言えば安全な部類に入るが
人にとっては、自殺行為ともいえるほど危険な場所だった

血肉の臭いや獣の臭気が風に乗って漂って、
けたたましい警告の声が頭上で何度も発せられている
それは、ここに何かいるよ、と発信しているのだ

それにいち早く気付いたのは意外にもたんぽぽだった
「急ごうよ、人の世界まで」
「あ、うん、走る?」
たんぽぽの隣にいたときわが気付いたように、肯き提案する

その声を受けて、カイキは、肯き
全員で走り出した

その途端、ばさばさと、木から飛び立つ鳥や
移動する猿に似た動物
子竜達が動いたことによりあわてているのではない
この場に、人にとっても、ここに住まう生き物たちにとっても
怖い生き物がやってくるということ
カイキは一人、背中に汗をかいていた

子竜たちに人であることを願いながら、
竜の力で、それを退けてほしいと願う
相反する気持ちと、恐怖心と焦りが
汗となって背中を流れ落ちていく

しかし、走り出して数分
森は死んだように静まり返った

「え?」
あまりの事態にカイキは、立ち止まる
子竜たちも、それを見て止まった

「何事でしょうか・・・?」
そう呟いたカイキと子竜の目に映ったのは
蒼い空に映える白い巨体
そして、黄色と赤、緑の竜が空へと舞い上がる

「大きい・・・ヴェルデがあれほどに小さく見えるとは」
そう言って、まぶしいのか目を細める

「ブロージュとルアンはでかいよ
 強いからね
 静かになったのは、その強い竜が、竜としているから
 前は人であっても、この状態だったんだけどね」
そう、るりが説明すると、あれがブロージュさんと
唖然として小さくなっていく姿を目で追う

「ねぇ、急がなくていいの?」
この地の獣たちが、警戒を解くのは時間の問題
竜による恐怖の圧力が解け、危険な獣はこちらへ来るだろう
狩りをする為に

「すみません、急ぎましょう」
そういって、もう一度走り出すカイキに
子竜たちは、人の弱さを認識した

「人って本当に弱いんだね」
兄弟竜のつながりで、そう発したのは誰だったのかわからないぐらいに
認識は強く同時だった
カイキは若く人の中では強いと思った
それは、竜と話し、そして、狩りをする匂いがある
カイキの強さによる自信は、気配として表現されていた

そのカイキは、子竜達にとっては、幼竜時代の最期の方に
狩りの練習で捕まえた生き物に真剣に怯えている
おいしいから、食べたいなぁと、のんきな子竜たちと
カイキの雰囲気は音を立てて亀裂とが入るほど違っていた
それ故にたんぽぽが気付いたともいえる

子竜たちも、竜の中では、弱い
経験もさることながら、元々、捨てられるほど弱い力であった
それに、人の姿固定のこの変態時期は、幼竜についで
竜の一生の中で、弱い時期になる
その時期を人の世で暮らし自分の興味のあることを学ぶのは
理に適っている

カイキの一族は、今は竜の誰も訪れていないが
興味のある分野に関して、学びに来る事は多々ある
しかし、「人」について学びたい
と言った竜は初めてだ
それも、お辞儀をする竜

二種族がそんな風に考えてると、風が変わった

「人の世界」
そう呟いたのはこくたん
ぴたりと足を止めて、ぐるりと周りを見て、一歩引き返した

「おいてきますよ、早く来てください」
そうカイキが遠くで叫ぶが
こくたんとともに止まったはくじが、首を傾げる

「もう、大丈夫なのにね
 人の世界だから・・・あっちの濃いところまで行きたいのかな」
小首を傾げて、歩き出すはくじに、こくたんも習う
竜たちは、止まり、思い思いの速度で歩き始めたのを見て
カイキもやっと止まり、振り返った

そしてカイキに合流すると
こくたんは、また「人の世界」と呟いた
「村はもう少し先ですから、行きましょう」
そう言うカイキに、あやめは、本当にわかってないなと思い
説明をはじめた

「ここは、もう安全だよ
 もっと弱い獣とかは入ってこられるけど
 ここは人の世界だよ、竜の世界じゃないから」
そう言うと、詳しく説明して貰ってもいいですか、とあやめをみつめた
あやめは少し目を伏せ
「じっと見ないでほしいなぁ
 説明はするから
 人ってじっと見るよね」
そう、不満がありますという気持ちを声に乗せて発した

「ああ、これは失礼を
 人の姿をされてるとつい、人と同じ行動をしてしまいがちですね
 人は、嘘や偽りがないこと示したり、興味があるものを見つめてしまいます
 それ故の行動ですね」
そう、カイキが説明すると、各々思い当たる節があるのか
そうだね、と笑った
それは、護り人が、じーっと見つめたり、何してるのかなぁって言いながら
みんなを追う仕草を思い出させた

「説明したら?」
説明をするといいながら、こくたんにそうふると、こくたんは素直に肯いた
「黒の竜は、空間の事がよくわかる種族だから
 あの木と木の間から、もう人の為の空間
 基本的には、空間の中央にいけばいくほど、その気配は強くなる
 だから、村は、もっと人の世界より
 たとえるなら、歩ける水場かな
 下に地面があるけど、足は濡れるでも、歩ける
 そんな空間
 村は、水の中ってイメージしたらわかりやすいと思う」

そう言うと、大変よくわかりました
説明がお上手ですね、とカイキは褒めた
しかし、こくたんはありがとうと形式的に返事を返しただけで
喜ぶことはなかった
彼女以外の人に褒められても嬉しくない
そう、こくたんは思った

「村に到着しました
 さぁ、歓迎しますよ
 これから、よろしくお願いしますね」

カイキが村に入ると
子供を連れたカイキにあちらこちらから声がかかる
迷い子かと心配され
そして、人の姿の同年代の子供たちから興味津々に見られ話かけられた
社交的なべにあかやときわは
竜であることを名乗り、世話になることを伝えている

逆に興味津々に周りを見ているのは
たんぽぽとるり
双方の会話を聞き、必要なことを答えるのは
あやめとこくたん
それに少し口を挟むはくじだった

村の中心で長老に挨拶をした時に
人の子から、なんだよ、気取っちゃって
すげぇー、なんだよあれー
と、変態期に竜の長にしたような挨拶をすると
驚かれた

「あんたたちも、あの竜の子みたいに
 竜のこと学んだらどうだい?」
そんな風な声があがり、どっと笑い声に包まれた

それは、竜でありながら人を学び
その姿勢に人も竜をさらによく知りたい
そう思わすきっかけにもなったことを
笑いに含ませて話していた

夜には子竜たちが村に来た歓迎を
夜通し行い
人の歌、竜の歌が混ざり合った
中でもはくじとあやめの歌は人の心を揺さぶった
心だけではない、魂までも揺さぶった
この地に生まれ、この地で生きるものとして
人であること、竜であることなど瑣末であると
そして、その地に暮らせることに感謝できることが
涙の形となり表現された

それから子竜たちは、人との暮らしを初めた
火をつけるにも、苦労があり
狩りをするにも苦労があることを知った

狩りは生きる為、そして竜本来の闘争心であり
それは楽しいものだった
魔法もまた飛ぶように呼吸するように当たり前である
竜たちにとっては驚きであり、
人の世の不便さを理解した
しかし、人が群れる理由を理解した
そうすることで、全体の生をつなげているのだと
それにより、人は人であることを理解していった

すっかり人の世になれ、人の暮らし
そして、竜として興味のあることを学びながら日々を暮らしていたが
彼女のことを忘れることはなかった

「こんなこと、してる場合なのかな」
ため息をつきたくなる状態故の言葉を吐いたのは
ちらちらと雪が降り始める冬だった

二人一組で、暖や料理の為の薪を道具を使って切っていた
かこんっというこぎみよい音が、寒さで硬質した空気を伝わっていく
子竜たちは寒くない、しかし人は寒い
そして、子竜たちの力は強く、労働力が大人以上ということもあり
村では、貴重な労働力に感謝した

「でも、他にすることはわからないし
 人の事知るのも大事だからね
 帰って来た時の為にね」
そう、あやめが、ときわに答えると
「わかってるけど、なんかな」
そういって、振り下ろした刃物は力が入りすぎてざくりと台座の木に刺さった

「気持ちは分かるけどね」
そういって、水の入った壺を軽々と抱えてるりが近づいてくる
この壺は、ふつう家の中にあり、桶で幾度も水を汲み運びいれる器である
しかし、るりにとって重くもなく、水は、近いものとして重さの感覚がなくなる
それ故、毎日数回、家を巡って壺ごと水の総入れ替えをしている

通常使う水は、桶で人々が補充するが
入れ替え、綺麗に洗うはそうそうできず、時に夏には病気になるものも出てくる
しかし、るりやその他の子竜のおかげで、そんな事もなく過ごし
この一件でも感謝されている

「るりさん、こっちよ」
そういって、赤ん坊を背中に負ぶった人が、頭の上で大きく手を振った
「うん、今行く」
そう答えるのと同時に赤ん坊の泣き声が響いた

「よしよし、いい子ね〜」
彼女は、背中に手を回し、全身を揺らすように赤ん坊をあやしはじめた
揺れるたびに赤ん坊の声も揺れ
子竜たちは心配になった

「何してるの?」
そう、心配そうに聞いたのは、あやめだった
「ん、竜はしないのかな?
 泣いてる子を大好きよ、大丈夫よって
 あやしてるのよ」
泣きやんだ子供の顔をあやめに見えるように布をずらした
幾重にも布で包まれたひだの中
赤ん坊の白い顔が見え、あやめと目が合った瞬間に
ひゃはっと愛らしい声を上げて笑った

「竜は、泣かないから」
そう、るりが言うと、へぇびっくりねぇと逆に驚かれる始末
「竜のお母さんはどうやっておなかが空いたとか
 おむつ変えてっていうの?」

その言葉を彼女が発した時、
子竜達が、ぴたりと止まった

「おかーさん・・・」
「そうよ、お母さんよ
 もしかして、もう亡くなってしまったなら
 悪いこと聞いたわね」
そういって眉を寄せたから、慌てて首を横に振った

「あのさ・・・」
「ん、なぁに?」
「おかーさんって・・・何?」
そう、るりが質問した時には
子竜達は全員集まっていた
そもそも喧嘩の最大の理由であるおかーさんについて
意味合いは理解したけれど、
なぜ、竜の戦いを、それも弱い人間が身を挺してまで
止めるのか、それは未だ理解できてなかった
だから、るりは、人に
おかーさんである人に聞いてみた

「え?」
彼女は一瞬きょとんとして、どう、説明したらいいのかなぁと
苦笑いをした
当たり前の事を聞かれるほど困る事はないが
竜たちは、それを知りたがる事が多い
やはり、人にとって竜は謎のままなのだ

「私はこの子を生んだの
 そしてね、この子にとって私はお母さんで
 私のお母さんは、家の中にいる人ね
 人間はこうやって産み育ててるの」
「自分の血の入った子だけなの?」
「基本的にはそうだけど、旦那の連れ子や
 親のいない子は、誰がが代わりのお母さんになって育てるわね
 そうねぇ、お母さんっていうのは太陽みたいなものかな」

空を見上げる彼女の視線を追って子竜たちも太陽を見つめる
冬の柔らかな光が、降り注ぎ暖かさを感じる

「何も言わなくて、光をふり注ぎ続ける太陽
 子供に対して、大好きだよって愛情を降り注ぎ続ける人だねぇ
 一度自分の子供になったなら
 私の命に代えても、護り育て行くよ
 だって、この子は私の宝だからねぇ」
くるりと、おぶい布を回し、胸に抱く
「見てご覧、このかわいらしいこと
 この子が笑って、大きくなっていくのが私の一番の願いだよ」
寒さに震えないよう、苦しくないようにと布をあわせて
胴体をぽんぽんと叩く

「命の重みだよ、そして、私の生きる糧」
そう言って笑う彼女は、そう、護り人と似た輝いた笑顔だった

「たとえば、この子がさ・・・」
るりにしては、歯切れが悪く言葉を継ぐ
「病気になったらどうする?」

「治るまで看病するだけさ
 族長の薬師に頼んで薬を作ってもらって
 あとは、この子が元気になるようにって
 ずっとずっと看病するのさ」
「その時もし、自分が同じ病気だったら?」
「それでも看病するね
 薬が1つしかないなら、この子にあげるね」
子竜たちの聞きたい本質を読みとって彼女はそう答えた

「自分の命より大事さ」
こともなげに彼女はそう言う

そのあっけらかんとした様子で答えているが
瞳に宿る愛情と真剣さが、
彼女とダブって見えた

自分が死んでもいい、弱いのはわかってる
怪我してほしくない
ぐるぐると頭を駆け巡る言葉は
彼女のものなのか
今、話してくれてるいる人のものなのか
境目がなくなってきた

「そっか・・・だから、竜の戦いに割り込んで来るんだ
 そっか・・・」
そう呟くるりに同調するように、子竜たちは声のない呟きを発した

「大事にしてくれた人がいるの?」
そう聞く彼女に、全員で肯く
「僕らにとっても大事な人で
 本人がおかーさんだから、みんなを護るのって言われた意味が
 今やっとわかったんだ」
そう言って、るりは、遠くを見上げた

「人は弱くて、逆に護りたいような存在なのに
 無茶して、怪我してほしくないからって
 それで自分が怪我して・・・
 なんでかとおもったけど・・・おかーさん・・・だからか」
「そうだよ、それがお母さんだよ
 みんないっぱい愛情受けて育ってきたんだね
 人であること、竜であることは本当に関係ないんだねぇ

 私もあんたたちに出会えてよかったよ
 いっぱいいっぱい、愛情注いでもらったから
 あんたたちはいい子で、人のことに耳を傾ける竜なんだねぇ」
満面の笑みで、うれしいを表現し
そして、全身全霊をかけ褒め、
なにより守護り人である彼女のことも褒めてくれた
その育て方がいいと
泣き出したいような、叫びたいような感情のうねりが
るりの人の体を駆けめぐる
それは力の奔流となり、るりの瞳をそして耳を変化させた

「ごめん」
堪えるように空に呟くるりに
彼女はぎゅっと抱きしめた

「竜ってのは可哀想だね
 泣きたいときにすら泣けないんだね」
そう言って、ぽんぽんと優しくるりを励ますように叩いた

それに呼応するようにるりはくるるっと鳴いた
それは、甘える声、笑う声だった
彼女がいなくなって初めてだす声だった

どんどんと小さくなる彼女と世界にるりは驚いた
人の姿から、竜へ
近くにいた家畜動物の声も人の声もなく
しんっと静まり返った


「おっ・・・たまげたぁ」
そう腰を抜かして
るりを、否、連鎖反応のように伝わって
竜に戻った子竜たち全員を見上げる長老はぽかんと口を開けて
地面に転がっていた

「ごめん、びっくりさせて」
竜体になったことにより
精神的におちついたるりが、人の姿に戻りながら謝った

「僕らもびっくりした、竜体になると思わなかった」
そう言うと彼女が、笑い出した

「あはは、びっくりして息が止まったよ
 でも、るり、綺麗だね」
キラキラと輝く瞳で、るりを見つめる彼女
「ありがとう、褒められると嬉しい」
そう、形式ではなく本音で答えると、彼女の頬が赤く染まった
感情を乗せた竜の言葉は
人にとって刺激の強いものとなる
しかし、なにより、るりの蕩けそうな笑顔が刺激的であったのだろう

「お別れの時期ですか?」
そう聞いたのは、この里に連れて来てくれたカイキだった

「春が来たら
 冬は人の里でいる」

こくたんがそういうと
周りから、残念だ、もっといろいろ教えたかったよと
呟く声が挙がる

「もう少し落ち着いたら帰って来ていい?」
べにあかがそう聞くと、仲間になったのか
少年達が、あたりめぇよっ
早く帰ってこいよっ竜の時間で考えんじゃねぇよ
なんて、言いながらはや泣きじゃくっている

「まだ、かえんねぇぞ」
なんて、笑いながらもその涙にべにあかの感情も揺さぶられた

モルスの一族とこの7人の竜はそれぞれのつながり
役割を持ち、共に生きてきた
間もなくの別れに、大人達は言葉少なく
できの良い弟子、そして、家族として、仲間として
竜たちのいない日々が来ることを哀しんだ

それほどまで、子竜たちとこの里のつながりは強くなっていたのだ

その冬は、竜たちと人は密に暮らした
残りわずかで、自分たちが教えられることを
そして、竜たちもそれに応え
竜として人の世にできることを返した

そして、春
芽吹きも遅く、花咲きも遅い春
その遅い春を、常ならば心配するのに
人々は喜び、そしてついに来た春を哀しんだ
それは、別れの時を意味していた

竜として、体が変化していく子竜たちに
別れを告げるしかなかった
竜たちもまた名残惜しそうではあったが
人よりも、早くに別れを受け入れていた
そして、ついに別れの時が来たのだった

中心に人型の子竜たち
そして、人々が集まり、思い思いに別れの挨拶と祝福をしていた

そんな中、人見知りが一番激しかったはくじは
長老に話しかけていた

子供たちになじめず、むしろ、こくたんの後ろに逃げ隠れる状態を
回避する為、長老に預けられたが、
はくじの歌そして知識を生かし、長老の補佐をしたり
奥方の手織物などを学んでいた

「いつもありがとう、いっぱい学べたけど
 また学びに来るから長生きしてね」
そう言ってはくじが、長老に手をかざした

白い光が、長老を包み込む

「おお・・・癒しの力か、これが・・・」
長老は歓喜に噎ぶように染み込んでいく光を見渡す

「腰どころか、関節も痛くない
 竜というのは・・・本当にすごい生き物ですのぉ」
しみじみとそう言い、感謝と別れをまずははくじに
そして、全員に告げた

日々弱りいく体に死を感じたはくじ
竜の力を使っていいなら、少しなおさせてと頼んでも
ここにいる限りは駄目と、断り続けた長老

人であっても、人でなくとも
約束を守り、それに真摯に向き合うことはできる
それは、それそれがもつ心なんだ、とはくじは思った
それを煩わしく思い、逃げ隠れしていた自分に
ほんの少しだけ後悔をした

人の子は、ただ、関わりたかっただけ
きれいでかわいいはくじに、好意をもっていたのだから
しかし、その好意ははくじにとって脅威でしかなかった
竜の距離感と人の距離感
でも、少しだけ、その距離を縮めてもいいのかも
そう、はくじは思った

「ありがとう、絶対に戻ってくるから」
そう言って、村の端、そして人の世の端まで見送る人たちに手を振り
竜の姿に戻った

ふるりと体をふるわすと、きらっと光を受けて、竜からうろこがはがれ落ちた

「あげる、なんの役にも立たないかもだけど」
そう言って、思い思いの人に精霊に運んで貰った
そして、ときわが空に向かって全員を押し上げると
くるりくるりと3回上空を舞うと、各自のすみかへと羽ばたいていた

人々は、その姿が、点になり見えなくなるまで
見送った 感謝と愛情を込めて・・・